1.すでに強制執行(給与差押など)されている場合
すでに給与などへの差押えがされている場合であっても、自己破産申立ををすることによって、強制執行手続きを中止させることができます。免責許可の申立てがあった場合、免責許可決定の確定までの間、債権者による個別の強制執行は停止され、すでになされている強制執行は中止されるからです。
破産法249条1項に次のような規定があります。「免責許可の申立てがあり、かつ、第216条第1項(同時廃止)の規定による破産手続廃止の決定があったときは、当該申立てについての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行はすることができず、破産債権に基づく強制執行等の手続で破産者の財産に対して既にされているものは中止する(破産法249条1項から抜粋)」。
1-1.債権差押手続中止の上申書
実務では、強制執行(債権差押)手続の中止を求める上申書を提出することで、給与差押えなどの強制執行手続きが中止されます。また、添付書類は、破産手続開始同時廃止決定正本ですが、コピーを一緒に提出すれば原本の還付を受けることができると思われます。
債権差押手続中止の上申書
上記当事者間の千葉地方裁判所松戸支部平成○年(ル)第○号債権差押命令申立事件につき,破産者は,平成○年○月○日に破産手続き開始の申立てをなし(千葉地方裁判所松戸支部平成○年(フ)第○号),同年○月○日破産法第216条第1項の規定に基づき破産手続廃止の決定を受けました。
標記事件は,上記破産手続きにおける破産債権に基づく強制執行であるので,上記破産手続きにおいて,破産者に対する免責許可についての裁判が確定するまでの間,標記事件を中止されたく上申いたします。
1-2.債権差押取消の上申書
自己破産申し立ての際、すでに給与差押えなどの強制執行がなされていた場合、免責手続中は強制執行の効力が中止されるのは上記のとおりです。そして、免責許可の決定が確定したときに、中止した破産債権に基づく強制執行手続はその効力を失います(破産法249条2項)。
そこで、免責許可決定が確定したら強制執行(債権差押)手続きの取消を求める上申書を提出することで、免責手続中の差押対象範囲の給与を受け取れることになります。添付書類は、免責許可決定書正本、および免責許可決定確定証明書正本ですが、コピーを一緒に提出すれば原本の還付を受けることができると思われます。
債権差押取消の上申書
上記当事者間の千葉地方裁判所松戸支部平成○年(ル)第○号債権差押命令申立事件につき,債務者が申し立てた破産手続開始申立事件(千葉地方裁判所松戸支部平成○年(フ)第○号)において,免責許可決定が確定したので,上記差押命令を取り消されたく上申いたします。
2.給与の差押えを防ぐための自己破産申立て
債権者が、債務者に対して貸金返還請求訴訟や支払督促を提起し、債務名義を取ろうとしている(または、すでに債務名義を取っている)場合には、早急に自己破産申立をおこなうことを検討します。
破産手続開始(および免責許可)の申立てをして、同時破産廃止の決定があったときには、債権者が個別に強制執行手続きをすることはできなくなるからです。
自己破産申立をしてから同時破産廃止の決定がされるまでの期間は、早ければ1,2週間程度です。したがって、すでに裁判を起こされているような場合であっても、早急に自己破産の手続きを進めていけば給料を差し押さえられてしまう心配は無いのです。