支払督促は、債権者の申立てにより、簡易裁判所の裁判所書記官が発するものです。

訴訟によるよりも簡易迅速に、債務名義(判決と同じような効力を有するもの)を得ることができるので、債権回収会社や消費者金融などに多く利用されています。

支払督促(送達、督促異議の申立てなど)
1.支払督促とは
2.督促異議の申立て
3.支払督促の送達
4.付郵便送達の通知書(参考)

1.支払督促とは

支払督促とは、金銭などの請求をするためにおこなわれるもので、債権者の申立てにより、簡易裁判所の裁判所書記官が発します。

支払督促は、申立人(債権者)が提出した申立書だけを審査し、債務者の言い分を聴くこと無しにされるものです。

つまり、支払督促は、債権者の一方的な言い分に基づいてされてしまうものなのですが、反論をしなければ相手方の言い分を認めたことにされてしまいます。

支払督促に対した言い分があったり、反論をしようとするときには、「督促異議申立て」をします。督促異議申立てをすると、そのまま訴訟に移行しますから、裁判手続きにおいて反論などをおこなうこととなります。

支払督促を受け取った日の翌日から数えて2週間以内に督促異議申立てをしないときは、債権者の申立てにより、支払督促に仮執行の宣言が付されます。

債権者は、この仮執行宣言付支払督促により、債務者に対して強制執行(差押え)をすることができます。つまり、支払督促を受け取ってから何もしないでいるうちに2週間が経過するだけで、裁判に負けた(判決を取られた)のと同じような状況になってしまうのです。

2.督促異議の申立て

督促異議の申立ては、債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内にする必要があります。この期間内に督促異議申立てをしなければ、債権者の申立てにより支払督促に仮執行の宣言が付され、強制執行(差押え)を受ける恐れがあります。

裁判所から送られてくる支払督促には、督促異議申立書が同封されているのが通常ですから、その用紙を使って自分で督促異議申立てをすることもできます。

ただし、督促異議申立てをしたらそれで一件落着というわけではなく、支払督促から通常の訴訟に移行して裁判手続きは進行します。

そのため、その後の訴訟への対応も含めて専門家に依頼したいのであれば、支払督促を受け取ったらすぐに専門家(認定司法書士、弁護士)に相談するのがよいでしょう。

なお、督促異議申立てをする必要が無いのは、支払督促の「請求の趣旨」に書いてあるとおりの金額を、すぐに支払っても構わないと考えるときだけです。

時効が完成しているとか、すでに全額を返済しているなどの理由で、支払い義務が存在しないと考えるときはもちろん、分割払いを希望する場合などであっても、まずは督促異議申立てをします。

3.支払督促の送達

支払督促は「特別送達」という特別な郵便により、債務者に送り届けられます。特別送達は、郵便受けに投かんされることはなく、書留郵便と同じように郵便局の配達員から手渡されます

支払督促を受け取るときには、「郵便送達報告書」に受け取った人の署名又は押印をするよう求められます。この時点で、支払督促が債務者に送達されたことになります。

送達は、送達を受けるべき者(債務者)の住所、居所などに対しておこなわれます。債務者の住所などへの送達ができないときには、就業場所において送達することもできます。

また、債務者本人が不在である場合でも、家族などの同居者に書類を交付することもできます。さらに、本人や同居者が正当な理由なく受取拒否をしたときには、送達をすべき場所に書類を差し置くことができます(差置送達)。

さらに、配達時に誰もいなかったときには不在票が入りますが、期限までに受け取らずに裁判所へ返送されたとしても、最終的には書留郵便等に付して発送してもらうことができます(付郵便送達)。

なお、付郵便送達をしてくれるよう裁判所に求めるには、債権者が「申立書記載の住居所について調査した結果、債務者が居住していることを確認した」ことの報告をします(付郵便送達の上申)。

付郵便送達では、書留郵便が発送された時点で、送達があったものとみなされます。つまり、書留郵便を実際に受け取ったかどうかとは関係なしに、支払督促の送達があったものとされるわけです。

結局は、支払督促を受取拒否することはできませんし、さらには、居留守を使い続けたとしても無駄だというわけです。支払督促が送られてきたら、すみやかに受け取って適切に対応するしかありません。

支払督促ができるのは、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限るとされています(民事訴訟法382条但し書き)。ただし、仮執行宣言付支払督促の送達は公示送達でもよいとされています。

4.付郵便送達の通知書(参考)

簡易裁判所が書留郵便により支払督促を発送(付郵便送達)したときには、同時に普通郵便によっても通知がおこなわれることがあります。参考までに、通知書の一例を掲載します。専門用語が多くて難しいかと思いますが、「この書留郵便を受領しない場合でも・・・あなたに送達されたことになり」とハッキリ書かれています。

平成27年(ロ)第××××号
債務者 ○○ ○○ 様

通知書

債権者 ○○株式会社 
債務者 ○○ ○○

上記当事者間の督促事件について,あなたに対し,支払督促正本を特別送達郵便により送達したところ不送達になりました。よって,改めて民事訴訟法107条1項に基づき,上記書類を書留郵便により発送しました。

ついては,あなたがこの書留郵便を受領しない場合でも,同法107条3項により,上記書類は,本日(本書面の日付)あなたに送達されたことになり,書類の種別に応じ,下記のような取扱いを受けることになりますので、必ずお受け取りください。

支払督促正本の場合 ― 支払督促に不服がある場合は,督促異議の申立てができます。あなたが,一送達の日(本日(本書面の日付))から2週間以内に督促異議の申立てをしないときは,債権者の申立てによって仮執行の宣言が付され,督促手続は進行し,強制執行を受けるなどの不利益を受けることがあります。

仮執行宣言付支払督促正本の場合 ― 仮執行宣言付支払督促に不服がある場合は,送達の日(本日(本書面の日付))から2週間以内に督促異議の申立てができます。あなたが督促異議の申立てをしないときは,仮執行宣言付支払督促は確定し,督促異議の申立てはできなくなります。

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