1.信用情報とブラックリスト
1-1.信用情報とは
信用情報とは、個人信用情報機関が保有している、ローンやクレジットの取引に関する契約内容や返済・支払状況などの客観的事実の情報です。一定期間以上の延滞があったり、債務整理や破産申立があった場合、事故情報(または異動情報)として、この信用情報に記録されます。
この事故情報が登録されている間は、クレジットカードやローンの審査に通らない可能性が高いです。この期間は、任意整理をした場合では、発生日から5年を超えない期間(日本信用情報機構)」となっています。
個人に関する信用情報機関は全国銀行個人信用情報センター、株式会社シー・アイ・シー、株式会社日本信用情報機構があり、それぞれが独自に情報を収集・管理しています。
1-2.ブラックリストについて
債務整理(任意整理、自己破産、民事再生)をすることで、ブラックリストに載ってしまうのが心配だと考えている方もいらっしゃるでしょう。けれども、ブラックリストと呼ばれるような、債務整理や長期延滞をした人だけが載っているようなリストが、現実に存在するわけではありません。
ただし、債務整理をすると、個人信用情報機関に事故情報(または異動情報)として登録されてしまうことがあります。この事故情報が登録されている状態のことを、ブラックリストに載っていると俗にいうのです。
クレジットカードやローンの審査をする際には、個人信用情報機関に照会しますから、それによって事故情報が登録されてる(ブラックリストに載っている)ことが判明するというわけです。
なお、他人の信用情報を見ることができるのは、銀行、クレジット・信販会社、消費者金融等、個人信用情報機関の会員企業に限られます。したがって、一般の企業や個人が他人の信用情報を調べることはできません。
また、この信用情報を確認するのは、「新規にクレジットやローンの申し込みした場合」や、「契約後に与信枠の見直しや信用状況の変化を確認するとき」です。よって、債務整理をしたからといって、そのことが勤務先や知人に知られることはありません。
2.個人信用情報機関への事故情報の登録期間
たとえば、日本信用情報機構では、「債権回収、破産申立、強制解約および債務に関する整理行為がなされた場合の情報」について、登録期間が「発生から5年を超えない期間」となっています。
なお、ここでいう「発生」とは、任意整理の場合には和解契約をした日だと考えて良いでしょう。つまり、任意整理により和解契約を締結した日から5年を経過すれば、債務整理をしたとの事故情報が削除されることになります。
各個人信用情報機関が公表している、事故情報等の登録期間は次のとおりです。
信用情報機関名 | 株式会社日本信用情報機構(略称:JICC) |
主な加盟企業 | 消費者金融 |
登録情報 | 「個人のお取引きから発生する情報」 債権回収、破産申立、強制解約および債務に関する整理行為がなされた場合の情報 |
登録期間 | 発生日から5年を超えない期間 |
信用情報機関名 | 株式会社シー・アイ・シー(略称:CIC) |
主な加盟企業 | クレジット会社 |
登録情報 | 「お支払状況に関する情報」 報告日、残債額、請求額、入金額、入金履歴、異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日、延滞解消日、終了状況等 |
登録期間 | 契約期間中および取引終了後5年間 |
信用情報機関名 | 一般社団法人全国銀行協会(略称:全銀協) |
主な加盟企業 | 銀行 |
登録情報1 | 「取引情報」 ローンやクレジットカード等の契約内容とその返済状況(入金の有無、延滞・代位弁済・強制回収手続等の事実を含む)の履歴 |
登録期間1 | 契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間 |
登録情報2 | 「官報情報」 官報に公告された破産・民事再生手続開始決定等 |
登録期間2 | 当該決定日から10年を超えない期間 |
3.過払い金返還請求と信用情報(ブラックリスト)
3-1.完済後の過払い請求の場合
借金を完済後に過払い金返還請求をした場合、信用情報に登録されることはありません。
完済しているということは、当たり前ですが、借入残高がないわけです。借入残高が無いところに、債務整理等の事故情報を登録することはできませんから、完済後の過払い金返還請求では信用情報に登録される(ブラックリストに載る)ことはありません。
ただし、完済したつもりであっても、わずかに借入残高が残っているような状態だったとすると、司法書士から受任通知を送った時点で事故情報が登録されてしまう危険性もあると考えられます。
この場合でも、過払い金の返還を受ける和解が成立すれば事故情報は削除されるので問題ないと思われますが、一時的にでも事故情報が登録されるのを絶対に避けたいのであれば、完済し解約手続をした後に、過払い金返還請求をするのが確実でしょう。
3-2.借入残高がある状態での過払い請求の場合
現在も取引が継続中の(債務が残っている)状態で、司法書士に任意整理を依頼した結果、すでに過払いになっていたため、この過払い金の返還請求をした場合はどうでしょう?
かつては、このケースで、過払い金の返還を受ける和解をした場合には、信用情報に「契約見直し」と登録されていました。しかし、平成22年4月19日からは、契約見直し情報の登録が廃止されました。したがって任意整理の結果、過払いになっていた場合でも、信用情報に傷が付かないこととなったのです。
なお、契約見直し情報が無くなったことで、過払い金返還請求しても信用情報に傷が付かなくなったのは事実です。しかし、司法書士から債務整理開始通知(受任通知)を相手方に送った時点で、その情報は登録されます。その後、過払い金の返還を受ける和解が成立したことにより、全ての情報が削除されるのだと思われます。
3-3.過払いになっているかが不明な場合
現在も取引継続中の場合、まずは過払いになっているかを調査してみることにより、信用情報に事故情報が登録されるのを避けることが可能です。
取引期間や借入利率から判断し、過払いになっていることを予想して、司法書士に任意整理を依頼したが、実際に法定利息による再計算をしたところ、債務が残ってしまうことも考えられます。
この場合、残った債務を一括または分割で支払う和解をすることになりますが、これだと債務整理をしたことが信用情報に事故情報として登録されてしまいます。
これを避けるために、まずは、ご自身で貸金業者(消費者金融、クレジット会社)から取引履歴を出してもらいます。取引履歴の開示請求には、どの業者も応じてくれますし難しいことはありませんが、ご不明なことがあればお気軽にお問い合わせください。
送られてきた取引履歴をご持参いただければ、当事務所で再計算します。その結果、過払いになっていた場合にのみ過払い金返還請求をすれば信用情報に傷が付く(ブラックリストに載る)のを避けられます。
一方、再計算によって債務が残ってしまった場合、そのまま支払を継続して、完済してから過払い金返還請求をする、または、他社の過払い金で一括返済してから過払い金返還請求することを考えます。
ご本人が取引履歴の開示を受けただけで、信用情報に事故情報が登録されることはありませんから、このようにすることで、予期しないのに信用情報に傷が付くのを避けることができるのです。