いったん全額の返済が終わった(途中完済した)後に、再び借り入れをしていることがあります。この場合でも、途中完済の前後を通じ、全ての取引を一連一体のものとして過払い金の計算をするのが原則です。つまり、途中完済により残高がゼロになっている期間があったとしても、全てを一つの取引として計算すればよいのです。

ただし、過払い金返還請求の相手方である消費者金融等からは、途中完済したときに取引が終了しているので、途中完済の前後は個別の取引であるとの主張がなされることがあります。途中完済したときに、カードを失効させ、基本契約書の返還受けたなどの事実があれば、そこで取引がいったん終了したとの主張も当然でしょう。

しかし、途中完済時に解約したなどの事情がなかったとしても、途中完済の前後が個別の取引だとの主張がなされることも多いのです。裁判(過払い金返還請求訴訟)においても、途中完済後の空白期間(残高ゼロの期間)が長い場合、一連計算が認められないこともあります。

過払い金の個別計算の方法

この場合には、途中完済までの分と、再借入後の分と、それぞれの取引について個別に過払い金を計算した後に、2つの過払い金額を合計します。たとえば、途中完済までの過払い金が50万円、再借入後の過払い金が50万円であれば、過払い金額は合計の100万円です。

また、再借入後の分については、引き直し計算しても債務が残る場合には、途中完済までの過払い金額と差し引きして計算します。つまり、再借入後の分の債務残高が20万円、途中完済までの過払い金が50万円であれば、差引残高の30万円が過払い金だということになります。

なお、この場合に、過払い金の50万円全額を先に返還してもらい、債務が残っている20万円については分割で支払っていくということはできません。まずは、残債務と過払い金とを相殺し、それでも過払い金が生じている場合に返還請求ができるわけです。

上記のとおり、たとえ一連計算が認められないとしても、途中完済前の過払い金の返還を受けられないわけではありません。しかし、個別計算をするということは、つまり、途中完済時に取引が終了していたと判断されるわけです。

そのため、途中完済したのが10年以上前であった場合、途中完済までに生じた過払い金が時効により消滅していたことになってしまいます。これを防ぐためには、完済の前後を通じて取引が継続していたことを主張していくしかありません。

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