債務整理の方法としては、任意整理、民事再生、自己破産などがあります。このうち、民事再生、自己破産が裁判所で手続きするのに対し、任意整理は相手方と直接の話し合いによって和解しようとする手続です。

自己破産、民事再生の概要

まず、自己破産は、借金(債務)の返済をすべて免除してもらおうとするための手続きであり、非常に強力な債務整理の手段です。自己破産をして免責許可の決定が出ることで、借金の支払い義務から完全に解放されます(一部の非免責債権を除く)。ただし、どんな場合でも免責許可決定が得られるわけではありませんし、いちばん最後に検討すべき債務整理の方法であるといえます。

民事再生は、借金(債務)の支払いを一部免除してもらうための手続です。一部といっても、最大で8割の債務免除が受けられますから、自己破産に劣らず強力な債務整理手続きだといえます。そのため、民事再生の再生計画にしたがった返済が本当におこなえるのかを判断するために家計収支の状況を厳しくチェックされますし、手続き自体も自己破産より複雑です。

自己破産と比べての民事再生の最大の特徴は、住宅ローン支払い中の自宅(マイホーム)を手放なすことなく債務整理できる場合があることです。自己破産をすると、住宅ローン支払中の不動産は必ず手放さなければならないので、自宅を守りたいと考えるときには民事再生の利用を検討します。また、個人民事再生では、原則として借入れの事情などは問われませんから、自己破産では免責許可決定を得るのが難しいと予想される場合にも利用できます。

任意整理とは

上記のとおり、自己破産、個人民事再生が、借金の一部または全部を免除してもらうための手続きであるのに対し、任意整理では債務元本のすべてを返済するのが原則です。元本のすべてを返済するわけですから、借りたものはちゃんと返したいとの考えにも合致する債務整理手段だといえます。

任意整理においては借入債務の元本全てを返済しますが、今後の利息(将来利息)については全額を免除してもらうのが原則です。このことにより大幅に支払いが楽になるのです。たとえば、債務元本が50万円だとして、それを毎月1万5千円ずつ返済する場合、利率が年18%であれば総支払額は約70万円(47回払い)になりますが、利息が無ければ支払総額は当然のことながら50万円(33回払い)で済みます。

また、任意整理をする際には、年18%(借入が10万円以上100万円未満の場合)を超える高金利での借入をしていた時期がある場合、一番最初の取引までさかのぼり全てを年18%の利率で再計算(利息の引き直し計算)をしますから、債務元本自体が減ることになります。このように任意整理では、将来利息の免除と、過去の利息の引き直し計算をすることにより、借金返済が大幅に楽になることが期待できるのです。

ただし、ご注意いただきたいのは、将来利息の免除については債権者の同意が得られた場合に限られることです。かつては、ほとんど全ての消費者金融が将来利息の免除に応じてくれました。しかし、過払い請求の激増にともなう業績悪化により、将来利息を付加するのでなければ和解に応じない債権者もあります。

支払い回数についても、従来は36回(3年)払いを標準とし、最大で60回(5年)払いまで応じてくれる債権者が多かったのですが、最近ではもっと短い回数での返済を要求してきたり、更には分割払いでの和解には一切応じない債権者も出てきています。

そのような債権者がある場合、任意整理による債務整理を諦めざるを得ないこともありますし、以前に比べて任意整理が困難なケースが増えているのは事実です。それでも、債務整理をする際、まず最初に検討すべき手段が任意整理であることに変わりはありません。