個人民事再生とは
住宅ローンを支払中の方が、住宅ローンの他にも債務を抱えて返済が困難になった場合でも、個人民事再生を利用することでご自宅を手放すことなく債務整理が可能です。
個人民事再生は2001年(平成13年)4月から施行された手続ですが、平成の徳政令と表現されることもあるほどの絶大な効力があります。
個人民事再生によっても、住宅ローンについては利息を含めて全額を返済する必要があります。しかし、住宅ローン以外の債務については最大で8割の免除を受けることができるのです。
たとえば、住宅ローン以外の債務が500万円ある場合、個人版民事再生法の規定によれば、このうち最低限返済すべき額は100万円です。また、返済期間は原則として3年間となっています。
したがって、500万円のうちの100万円を3年間で返済するという民事再生の再生計画を立て、実際に返済を完了すれば、残り400万円の支払いが免除されるわけです。
100万円を3年間で返済する場合の月額は28000円弱です。つまり、住宅ローンにプラスして毎月28000円弱を3年間支払うことで、その期間終了後には、住宅ローン以外の債務が消滅してしまうことになります。
債権者の側から見れば、借り主がマイホームという最大の財産を維持したまま、自らの貸付金は大幅にカットされてしまうわけですから、虫が良すぎる話だといえるでしょう。
しかし、借り主の側としては、民事再生法という法律が存在する以上、家計の立て直しを図るために民事再生手続を利用するのは正当な権利なのですから、躊躇することはありません。
個人民事再生と自己破産との違い
自己破産をすれば、住宅ローンもそれ以外の債務も全て支払い義務が無くなります。しかし、住宅ローンを支払わないわけですから、当然ながら住宅を手放すことになります。また、住宅ローンを除外しての自己破産はできませんから、自己破産の場合には、どうやっても自宅を維持することはできないのです。
これに対して、個人民事再生では、これまでどおり住宅ローンを支払いつつ、住宅ローン以外の債務の支払いについては大幅に免除してもらえるわけです。
この他にも、職業についての資格制限が無いことや、免責不許可事由に相当するような規定が無いことも、自己破産に比べての個人民事再生のメリットだといえます。しかし、資格制限があるのはごく一部の職業に限られますし、免責不許可事由が問題になるのは借入の原因に問題がある(極端な浪費やギャンブルなど)場合だけです。
よって、多くの方にとって、自己破産ではなく個人民事再生を選択する最大の理由は、住宅を維持しつつ債務整理ができることに尽きるといえます。
この他にも、自己破産では全ての借金を棒引きにしてもらうのに対し、個人民事再生では一部であっても返済をすることから、精神面での抵抗感も自己破産に比べて小さいといえます。
個人民事再生を利用できる人は?
個人民事再生を利用できるのは、継続的または反復して収入を得る見込みがあり、かつ、住宅ローン以外の債務が5,000万円を超えない方です。サラリーマンなどの給与所得者はもちろん、個人事業主でも継続的または反復して収入を得る見込みがあるならば利用可能です。
他にもいくつかの要件がありますが、安定した収入がある方であれば、個人民事再生を利用できる可能性は高いといえるでしょう。よって、返済が困難だと思ったら、早めに専門家(司法書士、弁護士)に相談するのが解決への近道です。
なお、個人民事再生の手続は自己破産に比べて複雑であり、また、個人版の民事再生は比較的新しい制度でもあります。そのため、弁護士や司法書士であっても手続に精通しておらず、個人民事再生が利用できるのにもかかわらず、自己破産することを強く薦めるケースもあるようです。
したがって、個人民事再生の利用を考えているならば、手続を依頼しようとする司法書士や弁護士に、個人民事再生を利用しての債務整理が可能であるかを、初めにしっかりと確認しておくべきでしょう。
「個人民事再生」の関連情報
個人民事再生についての詳しい情報は、次の高島司法書士事務所のホームページでご覧になれます。
・個人民事再生のページ
・個人民事再生のよくある質問のページ