前回まで、任意整理、個人版民事再生について解説してきましたが、これらの方法によっての債務整理が困難な場合に検討すべきなのが自己破産です。
自己破産とは、その方の総財産を債権者へ公平に配当し、それでも支払いきれない債務について免除を受ける手続です。自己破産の申立てをし免責許可の決定を得ることにより、債務(借金)を返済する法的責任が消滅します。
ただ、総財産を配当するといっても、通常、手放すことになるのは不動産(マイホーム)およびローン支払中の自動車くらいです。その他、とくに高価なものを所有しているのでなければ、家にあるものが差し押さえられたり、取り上げられたりすることはありません。
それ以外には、自己破産したことが戸籍や住民票に記載されたり、選挙権が無くなるようなこともありません。また、自己破産すれば、それが信用情報に記録される(いわゆるブラックリストに載る)状態になるので、新たな借入れが一定期間できなくなりますが、それは任意整理、民事再生でも同様です。
よって、自己破産によるデメリットは一般に思われているより少ないのであり、債務を抱えている状態からもう一度やり直すための手段として大変有効なものです。
しかし、自己破産の手続においては、任意整理、民事再生と異なり借入れをした事情や返済不能に至るまでの経緯が厳しく審査されます。たとえば、借入れの大部分をギャンブルや遊興費などに使ってしまったとすれば、免責許可が得られないことがあります。
それでも、免責許可をするかの判断は全ての事情を総合して行われますから、少しくらいギャンブルをしたからといって直ちに不許可になるわけではありません。また、免責不許可事由に該当する行為が多く見受けられる場合、破産管財人による調査を経たうえで免責を許可するといった取扱いも行われています。
したがって、免責許可を得るのが難しいと予想されるからといって、すぐに諦める必要はありません。それに、そもそも任意整理、民事再生の利用を検討したうえで、自己破産を選択するのに至ったのであれば他に良い方法はありません。
本気でやり直すつもりであれば、借金の問題は必ず解決できます。ひとりで悩んでいる方は、早く勇気を持って司法書士にご相談ください。