本日は、クレジットカードによる借入れについての過払い金返還請求訴訟で裁判所に行って参りました。当事務所の計算によれば、80万円以上の過払い金が発生しているのに、相手方が認める過払い金が20数万円でしかないため提訴するに至ったのです。

クレジットカードによる金銭の借入れでは、大きく分けるとローンとキャッシングの2通りがあります。返済方法は、ローン取引では借入残高に応じて毎月の返済額が定められているいわゆるリボルビング払い、キャッシング取引の場合は翌月(または翌々月)一括返済となっているのが通常です。

1枚のクレジットカードで、「ローン(リボ払い)取引」、「1回払いのキャッシング取引」のいずれかをしていた場合、その全ての取引を一連一体のものとして過払い金の計算をします。さらに、ローンとキャッシングが混在している場合でも、全ての取引を一連一体のものとして過払い金の引き直し計算をすれば良いと考えられます。

しかし、ローン、キャッシングいずれの場合においても、1回の借入ごとに契約(金銭消費貸借契約)が成立しているため、それぞれが別々の取引だとの主張をしてくる会社もあります。とくに、1回払いのキャッシングにおいては、1回の借入と返済が個別的に対応する関係のため、それぞれが個別の取引だとの主張をされることが多いです。

この主張が認められると、10年以上前に借入・返済した取引については、取引終了から10年が経過したことになり過払い金返還請求権が時効消滅してしまうことにもなりかねないので大問題です。今回、過払い請求訴訟に至ったケースでも、1回払いのキャッシングについて上記のような主張がなされたものです。

基本契約が1個の場合に一連充当計算すべき根拠

クレジットカードによる金銭借入の取引では、最初に作成した「クレジットカード会員申込書」というような名称の書面以外には、契約書に相当するものは存在しません。このクレジットカード会員契約には、借入方法、返済方法、借入利率、利息の計算方法、返済金の支払い方法等が定められています。

貸し主(クレジットカード会社)と借り主は、上記契約にしたがって、借入限度額の範囲で借入れと返済を繰り返していたものです。つまり、5万円とか10万円とか1回の借入をするごとに新たな契約が成立するなどということはなく、あくまでも1個の「基本契約」に基づくものだと考えられます。

平成19年6月7日の最高裁判決では、基本契約が締結されている場合には、借入限度枠の範囲で繰り返し借入れをすることができ、弁済は借入金全体に対して行われるものであり,基本契約は「弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいる」と判示しています。

よって,1個の基本契約に基づく取引は、全ての取引を一連のものとして過払い金を次の新たな借入金債務に充当し計算すべきだとの結論になりますから、1回払いのキャッシング取引であっても全ての取引を一連一体で計算すべきということになるわけです。

ただし、個々の下級審での裁判においては、個別の貸付ごとに金銭消費貸借契約が成立している(個別取引である)との主張が認められてしまっているケースもありますから、相手方の主張にしっかりと反論することが大切です。

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