個人民事再生では、基準債権の総額(債務総額)に応じ、再生計画に基づく弁済の総額(計画弁済総額)の下限が定められています。たとえば、債務総額が100万円から500万円までの場合の、最低限返済すべき額(計画弁済総額の下限)は100万円です。
また、小規模個人再生でなく、給与所得者等再生を選択した場合には、計画弁済総額を可処分所得の2年分以上にしなければならないとの要件(可処分所得要件)もあります。
更に、上記の要件に加え、計画弁済総額は、債務者が破産した場合に債権者が受けることができる予想配当額(清算価値)を下回ってはならないとされています。簡単にいえば、最低でもその人が持っている財産の額以上は、支払わなければならないということです。これを清算価値保障原則といいます。
この清算価値は、個人民事再生の申立てをする際に作成する財産目録によって算出します。財産目録へは申立人(再生債務者)が持っている財産の全てを書くべきだと言えますが、実際には裁判所の書式を利用して次のようなものを記載することになります。
- 現金
- 預金・貯金
- 貸付金
- 積立金(社内預金、財形貯蓄等)
- 退職金制度(ある場合は、今、退職したら支払われるであろう退職金見込額)
- 保険(生命保険、損害保険、火災保険等)
- 有価証券等(株券、社債、ゴルフ会員権等)
- 電話加入権
- 自動車、バイク等
- 高価な品物(過去5年間で購入価格が20万円以上のもの)
- 不動産
- 敷金
- 相続財産(遺産分割未了の財産も含む)
生命保険等の保険解約返戻金がある場合で、契約者貸付を受けているときには、解約返戻金額から契約者貸付金額を差し引いた金額を財産目録に記載します。
このようにして財産目録に記載した財産額の合計が清算価値となりますが、退職金については、退職金見込額の8分の1を清算価値に加えるとする裁判所が多いと思われます。