近年、貸金業者や債権回収会社により、すでに時効期間を経過した債権についての、貸金請求訴訟や譲受債権請求訴訟が大量に提訴されているようです。当事務所では、原告をアペンタクル(旧ワイド)とする訴状が、宇都宮簡易裁判所から届いたとのご相談を複数いただいています。
5年間の消滅時効期間が経過している場合であっても、裁判により請求することは可能です。貸金業者から訴状が届いたのに、何の対応もせずに放置しておけば、請求どおりの判決が出てしまうこともあります。そうなれば、たとえ時効期間が経過していたとしても、判決確定から10年間は消滅時効の援用が出来なくなってしまいます。
したがって、消費者金融などの貸金業者から訴えを起こされた場合、必ず答弁書を提出しなければなりません。時効期間が経過しているのであれば、答弁書により消滅時効の援用を行うこともできます。
ご自分で答弁書作成や、その他の裁判所とのやりとりをするのが難しい場合には、弁護士または認定司法書士を訴訟代理人として手続きをまかせることも可能です。代理人がいれば、口頭弁論期日に裁判所へ行く必要もありません。
松戸の高島司法書士事務所でも、認定司法書士が訴訟代理人として裁判への対応をすることができます。「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」に書かれている期日を過ぎてしまわないよう、お早めにご相談ください。
時効期間経過後に支払ってしまった場合
なお、時効期間を経過した後、貸金業者等の従業員により弁済を強制され、それに応じてしまった場合でも、時効援用権を喪失しないとの裁判例が複数存在します。貸金業者等のする時効援用権喪失の主張が信義則上認められないと判断されることがあるわけです。具体例として、次のような裁判例が参考になります。
時効期間経過後に弁済があったが、時効援用権は喪失せず、時効援用を認めた事案である。「被告が専門家に相談するまで待ってほしいと依頼したのに対して、原告はその暇を与えず、時効制度を知らない被告に対して、債務の一部弁済を迫って時効援用を阻止しようとした」と認定し、信義則上、借主が消滅時効を援用しないであろうという信頼が貸金業者に生じたとは言えないとした(東京簡易裁判所平成25年6月25日判決)。
時効期間経過後の弁済について、「どんなことがあっても借金はなくならないよ。このままにしておいたら、家族や職場にも連絡するから」、「わざわざ静岡にまで社員を派遣してお金を使っているんだから、とにかく今週の金曜日までにいくらかでも支払ってくれ」などの原告従業員の取立行為を認定し、最後の取引日から約10年経過していたこと、当該弁済後1か月経過前に提訴されたことを考慮し、信義則上、「被告がもはや消滅時効の援用をしない趣旨であるとの保護をすべき信頼が原告に生じたとは到底解することができず、被告に本件消滅時効の援用を認めてこれを保護するのが相当」と判示した(東京簡易裁判所平成25年3月15日判決)。
時効期間経過後の弁済が、時効期間経過後貸金業者より一括請求を受けて、当該業者従業員より早急な弁済を求められたことによるものと認定し、貸金業者であれば消滅時効を十分に承知していることも踏まえ「被告は、上記支払当時、消滅時効の知識があったならば、消滅時効を援用することが確実に予想されたことなどの諸事情がある」として、信義則に照らして、借主に消滅時効の援用を認めている(東京簡易裁判所平成25年6月24日判決)。